話題のノーベル医学生理学賞候補者とデジタル変革
今年もノーベル賞発表の季節になりましたね。
ノーベル医学・生理学賞に米研究者2人 熱など感じる仕組み研究
受賞に至りませんでしたが、今年のノーベル医学・生理学賞の候補として、最も話題に上がったのは、カタリナ・カリコ氏でした。
カリコ氏は、Covid-19向けワクチンとして世界中で使用されているmRNAワクチンの開発者です。
mRNAワクチンは、短時間で設計可能、様々なウィルスや病原菌に適用可能、薬効の持続性、安価に生産可能など、多くの利点があり、医薬業界の大きなイノベーションと言われています。
遺伝子解析のイノベーション
遺伝子を応用した大きなイノベーションを実現したカリコ氏ですが、このような成果の基盤として、遺伝子配列解析器(シーケンサー)の大きな進化があると思われます。
実は遺伝子解析は、15年ほど前までは、非常に大きな費用と期間がかかるといわれる作業でした。2003年に完成版が公開された、ヒト遺伝子を解析するヒトゲノム計画は30億ドルの費用と15年の歳月がかかりました。一方、今では、同じ解析が、数百ドルの費用、数週間で実現できるようになっています。
ところで、半導体には18か月で集積度が2倍になるムーアの法則が50年以上持続しており、それが驚異的なコンピュータと情報社会の進化の基盤となっていいます。このシーケンサーの進化のスピードは、そのムーアの法則をはるかに超えるスピードなのです。
ムーアの法則を超える「ヒトゲノム解析」、がんゲノム医療が一気に身近に
この驚異的な進化は、情報業界における半導体のように、医薬品業界の加速度的な進化を下支えすると思われ、今後も更なる業界のイノベーションが期待できます。
AIによるイノベーション
他に、医薬業界での大きなイノベーションというと、AIを用いた構造予測があります。
Google傘下のDeep Mindが、たんぱく質の3次元の折り畳み構造を予測する人工知能モデル、Alphafoldで2018年、2020年のコンペティションで驚異的な成績で優勝しました。
タンパク質の折り畳み構造は、医薬品の効果発現の大きなカギを握るものの、従来は研究者がX線構造解析などといった高価な分析機材を用いて長い期間をかけないと解明できないものでした。
これが計算で高精度に予測できることになれば、飛躍的な業界の進化が期待できます。
Deep Mindは、AlphaFoldの仕組みとコードをオープンソースで公開予定としており、医薬品のイノベーションに大きな役割を担うものと期待されています。
このように、医薬業界では、データを取り込む解析機器の進化と、データを活用するAIモデルの進化により、根本的な変革が進み始めています。
今後5年、10年で人類の医療がどのように変わっていくか、注目したいですね。
(ちべ)
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