自動運転で進む社会のDX~米国西海岸における自動運転最前線を体験~
2024年8月から9月にかけてアメリカ西海岸を取材訪問した情報をベースに記載していますが、間違いやお気づきの点などあれば、ご連絡いただけると幸いです。
1.日本社会と自動運転
日本の自治体が取り組む地域課題として、モビリティというテーマがあります。高齢化した過疎地域においては、免許を返納した高齢者が、病院や買い物に行くのに苦労する実情があるものの、過疎地域では商店なども減少しており、離れた町に買い物に行かなければならないものの、バスなどの公共交通機関も維持が難しくなっている他、バス停が家から遠いなどの理由で、生活上の困難性が増しているという実情があります。
世界一高齢化が進展している日本は、課題先進国だからこそ、自動運転技術を早く事業化し、運転手を雇用しなくても、安価な地域内移動手段が提供できるスマート社会を目指すことが、ひいては技術やサービスの海外輸出につながり、日本の競争力にも繋がると考えていました(Society5.0参照)。しかし、課題が山積みという欠点を利点に変える戦略については、高齢化が進みつつある中国にお株を奪われつつあります。
日本で自動運転車の普及は実現していない理由として、以下のものが考えられます。
技術的な課題
日本の道路の複雑性
雪などの悪天候によるセンサー類に発生する不具合
法規制とガイドラインの整備不足
道路交通法や保険制度などの法規制が未整備
事故が発生した際の責任の所在の明確化
官民連携によるインフラ整備の遅れ
道路の標識や信号のデジタル化が進んでいない
地域の交通ルールや標識、信号のパターンのデータベースが未整備
社会的な受容性と安全性の懸念
安全性に敏感な消費者、社会の受容に時間がかかる
都市部などで、公共交通機関が米国より発達している
これらの課題については、認識しつつも、米国西海岸で実用化されている自動運転サービスについて、自動運転が普及した社会の姿をイメージするために、西海岸に飛んで、自動運転の現状を調査しました。
2.米国で普及する自動運転
今回調査対象となるのは、完全無人運転(レベル5)です。レベル5とは、運転手を必要としない自動車を指します。つまり、事故があった場合の責任が一切運転手に依存せず、すべて自動車メーカーになるという意味では、レベル4との意味合いとしての違いも大きいのではないかと思います。米国でも、まだ技術が完成して、一部のサービスが始まったところですが、デジタルのサービスはどんどん進化していくことが想定されますので、これからのモビリティや社会のDXを考える上で、現在地を知ることは重要かと思います。
テスラ(Tesla)
自動運転の車として、もっとも有名なのは、イーロンマスクの率いるテスラ社かと思います。世界の時価総額ランキングで、トップ10に入る企業で、トヨタ自動車の企業価値を大幅に上回っていることで有名です。日本でも、テスラの車を見ることはできますが、日本ではレベル5が法的に許可されていないため、実質的にレベル5の自動運転車の機能を搭載しているものの、レベル5の自動運転として走行しているわけではないということになります。今回の米国滞在中では、すっかり普及しているUber(ライドシェア、タクシーなど)にかなりお世話になりましたが、偶然配車されたテスラ車に偶然乗れる機会も多く、道路走行中にテスラ車を見かけたりする頻度もかなり多かった印象です。Uberでテスラが迎車に来た場合は、当然運転手が乗っており、「運転手が運転しなくてもいいのでは?」と思わず質問してしまいました。すると、Uberの顧客をとったりするためにどのみち運転手はいないといけないし、せっかく乗っているので運手もしていると言っていましたが、その場で完全自動運転に切り替えて、運転手が運転しなくてもよい様子を見せてくれました。
また、テスラの販売店に車を見に行ったりしましたので、テスラ車については、別ブログでご紹介できたら思います。
クルーズ (Cruise)
クルーズは、アメリカの大手自動車会社GM(ゼネラルモーターズ)の子会社で、自動運転車を使ったタクシーサービスを開発しています。クルーズは完全無人を目指して開発に取り組み、サンフランシスコでテストを行なっています。将来的に完全無人のタクシーを世界中に広げることを目指しているそうです。次章でご紹介するWaymoが既存のジャガー製の車両を使って早くサービスインすることを目指したのに対して、こちらは自動車メーカーですので、オリジナル車両を開発し、将来公共交通機関を代替して普及させることを狙っているものと予想します。
ズークス (Zoox)
ズークスは、アマゾンが買収した自動運転技術を開発している会社で、クルーズ同様、こちらも自動運転専用の車両をゼロから設計しています。快適な空間作りも大切にしており、様々な用途のサービス提供に対応するインフラとして位置づけているようです。未来の都市交通の一つとして、人々を安全に運ぶ新しい交通手段となることを目指しています。
室内は、4人乗りの対面シートのみで、前後どちらにも進むことができるため特別なエアバッグシステムが使われています。アマゾンのAI(人工知能)音声アシスタントのAlexa(アレクサ)を使用したサービスにも注力しています。
3.タクシーサービスのWaymo
DXという視点では、この自動運転がサービスとして提供されることにより、モビリティや社会インフラに大きな変化が生じることが、重要な注目点になります。アメリカの西海岸では、自動運転の車を使ったWaymo社のタクシーサービス(Waymo one)が実用化されており、Waymo社がジャガー社と共同開発した完全自動運転車(レベル5)が、カリフォルニア州のサンフランシスコ、ロサンゼルス、アリゾナ州のフェニックスの3つの町でサービスインしています。
このように市単位で自動運転を使ったサービスがローンチするのは、自動運転実現に欠かせない法制度の整備や実運用ルール、交通システムとの連携など、市や州との官民共同で取り組む事が欠かせないためと考えられます。この注目の3つの市を訪れ、自動運転を体感することにしました。
Waymo oneがサービスインしている地域
カリフォルニア州 サンフランシスコ
カリフォルニア州 ロサンゼルス
アリゾナ州 フェニックス
テキサス州 オースティン(準備中、2024年9月時点)
サンフランシスコでのサービス
私が最初に訪問した町は、カリフォルニア州のサンフランシスコでした。サンフランシスコ国際空港こそサービス範囲外ではありましたが、市内に入ってからは、市内の移動はほぼ、Waymo oneを多用し大変便利でした。本報告では、サンフランシスコでの体験を中心にご報告いたします。
フェニックスでのサービス
フェニックスは、アリゾナ州の州都で砂漠に囲まれた乾燥した大変暑い気候です。私の滞在中の気温は、華氏112度(摂氏44.4度)とまるでサウナ状態でした。このような地域なので、雪が降ることもなく、平坦で広い道路が続く特徴的なエリアであることが、自動運転車を最初にサービスインするエリアとして選ばれたのではないかと思います。
ロサンゼルスでのサービス
ロサンゼルスに行ってみると、招待コードを持っている人しか乗車できないという限定公開サービスであることがわかりました。すぐにウエイティングリストに登録をしたものの、1週間の滞在中には、残念ながら乗車することはできませんでした。少しずつテスト運用して問題を解決しながらサービスを拡大していくソフトオープンという位置づけかと思います。Waymoが使えない代わりにUberを多く使うことになりました。ロサンゼルスのWaymo one サービスの招待コードについては、日本への帰国後に受領することになりました。
サービス提供範囲(サンフランシスコの場合)
以下のWaymo社のサンフランシスコにおけるサービス提供エリア図を見ると、サンフランシスコ市とデイリーシティ市のみがサービス提供範囲となっており、サンフランシスコ国際空港のあるサウスサンフランシスコ市(右下の白い部分)などは、範囲外になっています。サンフランシスコ市とデイリーシティ市の広さを合計すると、140㎢相当であり、東京の山手線の内側の面積の2倍強程度です。これは、とても広いエリアとは言えませんが、都心で顧客訪問にタクシーを使うビジネスパーソンなどの感覚からすれば、十分な範囲であるとも言えます。(もちろん、今後、提供地域の拡大のために、今こうしている間も、Waymo社は多くの自治体と折衝しているのではないかと想像します。)
そのため、他の地域からの訪問者にとっては、買い物や観光に十分使える交通手段と言えます。また、サンフランシスコの中心部では、車10台に1台くらいがWaymoである印象を持ちました。そのくらいの台数が投入されていて始めて、呼んだらすぐ来てくれるサービスとして成立します。このように、地域において普及するという点では、やはりニーズのある地域1つ1つについて、地域の行政としっかり話し合って、サービスを立ち上げていくことが重要だと思われます。
前述の通り、サンフランシスコの玄関口であるサンフランシスコ国際空港はサンフランシスコ市外に位置するため、空港ではWaymo Oneは利用できませんでしたが、市内の区域(上記地図のブルーの部分)に入ったとたん、Waymoのタクシーを何台も目撃することになりました。ホテル到着後は、ホテルは市内にあったため、食事など出かけるたびにWaymo Oneを使い倒し、非常に快適な生活を実感することができました。
料金は普通のドライバーのいるタクシーと同じくらいの価格帯なのですが、すべてアプリをインターフェースとしており、料金や現在地、目的地が明瞭に確認できるので、「目的地が正しく伝わっただろうか?」「間違った場所に向かっていないか?」「遠回りされていないだろうか?」「すごい高い料金にならないか?」「このドライバーは信用できるのか?」などと不要な不安を持つことなく、快適な乗車体験ができることは、素晴らしいメリットではないでしょうか。
4.Waymo oneの乗車体験
このようなWaymo Oneの具体的な使い方について、以下に順を追ってご説明したいと思います。
①Waymoの呼び出し
基本は予約式ではなく、移動したい時にその場で申し込む方式です。そのため、スマホアプリを開いた時点で出発地は現在位置が最初から表示されており、目的地だけを指定すれば、Waymoを呼び出すことができるシンプルな操作になっています。
目的地を指定すると、何分でタクシーが到着するか、運賃がいくらかが自動計算されます。呼び出し確定(REQUEST CAR)ボタンを押すと、実車両がアサインされ、向かってきているタクシーの現在のロケーション、到着時間が表示されます。
乗車場所については、厳密に自身のいる位置とは限らず、周辺でWaymoが停車可能な場所が自動で選ばれます。また、付近のいつかの乗車位置候補から、選ぶことも可能です。これらの乗車場所の微修正は、呼び出し確定後に変更することができるため、まずはWaymoを向かわせておいて、最適な乗り場を再検討できるなど時間の無駄がないよう便利に設計されています。よくあるのは、道路の反対側に乗り場を変更し、道路を横断してWaymoを待つなどです。道路の反対側に渡ることにより、Waymoが到着のために大回りを要することを防いだり、目的地と進行方向を一致させるなどの時間短縮に通じることが多いためです。
②Waymoの到着
数分後、無人のタクシーが到着し、乗車位置である私の目の前に静かに停車します。すでに縦列駐車がびっしりと停まっていてで歩道沿いに停車する余地がない場合もありますが、その場合は2列目に素早く停まって乗降したり、少し先の停車できるスペースで停車するなどの工夫をWaymo自身が判断して実施しています。そのため、その場に何分とどまっていられるかなどもアプリに表示されます。このあたりも詳細に行政と確認してサービス化している印象を受けます。
車は、ジャガー製の電気SUV「I-PACE」であり、様々なセンサーや機材やWaymo独自に搭載されています。私の見た限り、すべての車両は同じ仕様のものです。電気自動車ということもあって、音も非常に静かで、静かすぎるので、耳障りではない程度の音を出して歩行者などに気づいてもらいやすい工夫がなされています。
③乗車
Waymoが到着しても、車はロックされており、ドアノブに触れることもできません。呼び出した当人のアプリでロック解除ボタンを押して初めて、開錠されてドアノブが出てくる仕組みです。この仕組みにより、他の人が間違って乗車してしまうトラブルを防いでいます。
なお、ドアノブが出現するのは、助手席と後部座席の両側であり、運転席には誰も乗れないようになっています。もちろん、助手席側から無理に移動すれば、運転席にも座ることは物理的には可能なのですが、Waymo社の公式サイトなどでも、定員4名となっていますので、後部座席に3人、助手席1人の合計4人と考えるべきでしょう。5人以上のグループでは、1台では足りないということになります。
乗車後、液晶画面で目的地を確認し、スタートボタン(Start Ride)を押すと、車がスムーズに動き出します。運転席には誰もいないのですが、ハンドルが自動で回っている様子は、何度見ても不思議なものです。人が使わないのに何故ハンドルがあるのかという疑問はありますが、いずれ進化していくことでしょう。シートベルトをしていない場合は、アラームが鳴ります。車内ではエアコンの温度や好きな音楽を選んで、リラックスして過ごすこともできます。
不明点がある乗客はすぐに会話でサポートできるように通話サポート機能も搭載されています。
④周囲の認識と自動運転
走行中、車は周囲の車や歩行者をしっかりと認識していることを示すように、モニターに認識しているオブジェクトをすべて表示しています。また、すべての交差点や信号、交通規制に対応して走行します。歩行者が横断歩道を渡る際には、車がきちんと停止し、安全に通過するのを待ちます。丁寧に確実な運転をする技術は、私たち人間も見習わなければならないかもしれません。
車内モニターを見ていると、他の車のウィンカーの点灯、自転車や歩行者の動きを詳細に認識していることも見てとれ、驚かされることばかりです。目の前のリアル空間の様子と車内モニターに描かれるデータの間では、特に遅延があると感じることもありません。横断歩道を渡ろうか迷っている歩行者がいれば、手前で止まります。歩行者は、「停まってくれてありがとう」と片手を挙げて合図をしようとするのですが、誰も運転席に座っていないのを見て、驚いている表情を見れることも少なくありません。
工事現場などのイレギュラーな状況にも対応し、必要に応じて安全を確認した上で反対車線にはみ出して前進します。目的地に到着し、降りると、一呼吸おいてあらドアノブが収納されロックされます。
⑤立ち寄り機能
途中で立ち寄り地点を設定をしたり、目的地を複数入れることもできます。こんなこともありました。立ち寄り地点をホテルに設定し、ホテルに荷物を取りに寄って、Waymoを待たせた上で、5分後に目的地に移動しようとしたところ、私が降りた瞬間にWaymoは他の顧客を拾いに行ってしまいました。私は「えー、行っちゃうの? 話が違うよー」と思ったのですが、アプリには、「最終目的地に行く用意ができたら、ボタンを押してください。他のWaymoが参ります」というメッセージが出ていました。これは、まさにデジタルならではの発想ですね。運転手がいるアナログな世界では、その運転手がそこで待つのが当たり前ですが、デジタルの世界では、このように情報さえ引き継げば、他のマシンが交代することが可能であり、待っている間の無駄も無くすことにより、車両の稼働の最大化が図れるのです。
ちなみに、この時は残念なことに、「付近で空いているWaymoが見つかりません」というエラーが出てしまい、最終目的地に行けないという問題が発生しました。デジタル過渡期らしいトラブルでしょうか。Waymo社にクレームしたところ、あっというまに返金してくれました。
5.自動運転で社会のDXはどう進むか
自動運転のある暮らしというと、私たちは単に今の社会や生活の一部が自動運転に置き換わることをイメージしがちです。従来からある運転やタクシーというサービスをそのままデジタルに置き換えることは簡単に発想できるのですが、実際に様々な分野でのDXで起こる事象としては、単なる部分代替ではなく、利用者のジョブ(目的を達成するための行動)の全体最適の実現です。サービスを提供する側にとっても、その影響をうける関連業界においても、デジタルだからこそ実現できるサービスというもの考え抜くことが、将来を見越すために重要です。例えば前述の車両の待ち時間の最大活用というのもあるでしょう。待ち時間に車両が稼働できるのであれば、従来のタクシーのように、「待っている間の課金」などという発想はなくなります。いつでもすぐ車両が来るのであれば、「予約」とか「予約料金」という発想もなくなるでしょう。乗り合い型のサービスなどでコストが下がることになれば、終電を気にして帰宅することもなくなりますし、居酒屋の営業時間にも影響を与えることでしょう。人の移動だけでなく、物の移動や様々な目的にサービスが細分化することもあるでしょう。もちろん、運転席が無くなることにより、移動中の居住空間のあるべき姿が再設計することにより、新たなビジネスチャンスも増えていくことでしょう。
完全自動運転が普及した社会において無くなるもの
交通事故
いきなりゼロにはならないにしても、人が運転するよりも、はるかに事故率が下がるようです。さらに自動運転にフル対応した交通インフラにすることで、安心安全な事故ゼロの町も目指せるのではないでしょうか。
自動車保険
運転手に一切責任がない時代になれば、自動車保険は不要となります。
カーナビや地図
運転手がいなくなる時点で、従来のカーナビや地図は不要になります。目的地を確認するなどの機能は、エンターテイメントなどを兼ねたモニターの機能の1つとして取り込まれることでしょう。
信号機
渋滞、運転手、運転免許証や運転席が無くなるだけでなく、すべての車両が自動運転になると、車同士が通信をして、交差点への侵入順序を決定できるため、車用の信号機は要らなくなるでしょう。
標識
運転手が視認する目的で設置している標識が不要になり、必要な情報は直接車に送られることでしょう。
車のライトやミラー
自動運転の車は、たくさんのカメラやセンサーを使って周囲の情報を得ていますが、人間が情報を得るために利用していたルームミラーやサイドミラーが不要になります。ライトは、運転手が視認する目的では不要になりますが、暗闇の中、歩行者に気づいてもらうためのライトのような仕組みが必要になるでしょう。
駐車場
街中で用事を足す際に、有料駐車場に入れなくても、無料で駐車できる場所に車を待機させることもできますし、空いている間はタクシーサービスで稼いでもらうことも可能です。街中の高価な駐車場は、他の商業施設に代わっていくことでしょう。
バスガイド、ツアーガイド
市内観光など、観光地で下車せずに車窓から案内をしてもらうような移動効率のよいツアーにおいては、バイスガイドやツアーガイドの仕事が無くなってしまう可能性があります。車の機能拡張の1つの方向性として、現在地や車窓の風景などに基づいて、様々な言語でガイドを提供できるようになるためです。
運転代行サービス
長野県の軽井沢町など、運転代行サービスが普及している地域がありますが、これは完全自動運転になってしまうと、無くなってしまいます。
短距離の公共交通
空いている自動運転車がタクシーサービスを始めるとすると、タクシー供給量が増えるため、自動運転タクシーがさらに安く便利になるでしょう。その場合、タクシーで最寄りの駅に行って、そこから公共交通機関を使うよりも、最初から目的地まで自動運転タクシーを使ったほうが便利で安くなる可能性があります。乗り合い方式があれば、コストも下がりますし、終電などもなく、24時間稼働できるので、短距離の公共交通(バスや電車など)が代替される可能性があります。
完全自動運転が普及した社会におけるビジネスチャンス
自動運転車に乗る人はすべて、「運転手ではない乗客」となります。移動する間の過ごし方が大きく変わることにより、その時間を有効に使うための、様々なビジネスチャンスが生じます。車中のエンターテイメントやテレカンなどの仕事環境など、本人の好みにあわせて、乗車した時点で、必要案ものが準備されている環境が提供できることでしょう。
移動オフィス
車の中で仕事ができるようになると、通勤時間が仕事時間に変わって、無駄な時間がなくなるかもしれません。窓を全部ふさげば、暗くすることもできますので、光の当たり方もコントロール可能になり、非常に高性能なテレカンブースとなる可能性があります。
移動カフェやレストラン
車中で飲食をしたり、飲酒をしてリラックスするサービス分野は、飲み食いしたいものをどこで車にタイミングよくのせるかなどを検討していくと、主力サービス提供者になるための競争の過熱につながりそうです。Uber Eatsのような食べ物を運ぶサービスをしている企業や、ガソリンスタンドや充電スタンドなどの車が立ち寄る場を持っているプレイヤーが、存在感を高める可能性もあります。
観光ガイドアプリ
車と連動して、現在位置や顧客の反応、質問などに対応してパーソナライズした観光ガイドをする車も現れるでしょう。その際に、Google Mapのように車に依存するのではなく、車と接続して利用できるガイドアプリが普及するかもしれません。車から降りて観光地で行動する際に、そのまま持ち歩いてガイドサービスを受け続けられることが予想されるためです。
さいごに
さいごまでお読みいただきありがとうございます。自動運転は、私たちの社会にもっとも大きな影響を与えうる新しい技術だと思います。これからの社会を先取りして地域の課題解決をしていくためには、ぜひ押さえておくべき動向ですね。
特に地方自治体で地域の交通で困っていらっしゃるところは、Waymo社などにコンタクトして、誘致活動をされたり、自動運転特区を作るために政府に働きかけるなどされると、その地域に多くの人が集まり、経済の活性化もねらえるのではないでしょうか。というのも、自動運転サービスを提供する側から見れば、自治体との密な連携が喉から手が出るほど、求められているのではないかと思います。
島しょ部の自治体などは、地域の道路が閉域であるために、行政の境界線を越えられないという悩みもありません。積極的に誘致に取り組んでいただきたいと思います。
また、自社の事業の挑戦領域として、自動運転関連ビジネスをイメージされる方もいらっしゃると思います。ぜひ、日本の競争力を高めるためにも、新しい領域に挑戦していただきたいと存じます。
安全安心で便利な社会の発展、日本の競争力の向上、世界レベルでの環境対策など、多くのメリットをもたらす可能性がある自動運転サービスについて、Waymo one を中心にご報告させていただきました。